
“ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ”
VENDOME,LA SICK KAISEKI/SPANK HAPPY
より
あなたの国は、小さい子のヌード写真がおおすぎるって、どのパーティーでもいわれた。
街中に裸の女の子の写真があふれていて、電車の中にまでつってあるのは絶対おかしいって。
でも、まさかそのうちの一人があたしだってことは、誰も気づかなかった。
あたしはこういう所に集まるマダム達は、エメラルドを頭にいっぱいつけすぎて
馬鹿になっちゃったんだって思って育ったの。
パパは「この国には肉食の文化が無いから。
みんな我々のように乳のみ仔牛から腐りかけの成牛までの、いろんな肉の味わいの差だとか、
ジビエの血の味の事とかが解らない。
だから子供の裸ばかりを有り難がるんだ。
一種の国家的変態だよ」っていうお得意の演説で、
腐りかけの成牛みたいなママを喜ばせてる。
彼女はキャビアを食べている人を見ると鼻をつまむ。
小さな卵を食べるのは野蛮人だって。
フォクシー1粒でアダルトヴィデオの女の子みたいになれるってきいたから、
あたしは自分を魔女だっていってる友達に頼んで、パーティーに持ってきて貰い、
最高に良く効きますように。そしてあこがれのトレーシーみたいになれますようにって
魔法をかけてもらってから、彼女とキスをして、コアントローで飲みほした。
どこかで生きていれば35になるのね。あたしのトレーシー・ローズ。
あなたは、あたしが知るかぎり本当の天才。そして天使。
あなたとパパの書斎で出会った日のことは一生忘れないわ。
黒革の表紙の本の裏に隠されていた80年代のVHS。
あのヴィデオキャセをパパから盗んでから、あたしの人生は変わった。
あれがバイブルになったの。
あたしは今、あなたがデビューした年と同い年で、あなたの娘ぐらいの年だわ。
そう思うと、とっても変な気分。
まだフォクシーは全然効いて無いみたい。
口の中は、熱いチェリーの味ばっかり。
生きてれば74歳になるのね。あたしのグレース・ケリー。
生きてれば15歳に成るのね。あたしのジョンベネ・ラムジー。
あなた方の事を考えると、死ぬほどうっとりして、死ぬほど憂鬱になるの。
パパの命令でお医者様にマリリン・モンローそっくりに改造されたり、
本当にある国の王女になるなんて絶対に間違ってる。
でも死ぬほど羨ましい。そして死ぬほど怖い。
あたしはこんなに死ぬほど羨ましくて、死ぬほど怖くて、死ぬほど退屈。
ヴァンドーム・ラ・シック・カイセキ
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